[書評] 弾言

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小飼弾氏の弾言を読みました。前回の書評とはオン・ザ・エッジつながりとなります。

この本をひとことで表すならば、「日本版金持ち父さん・貧乏父さん」。いや、マッチョ父さんとウィンプ父さんかな。要するに、格差社会で生きていく上での知恵とスキルについての、Dan KOGAI からの提言です。以下、読んで感じた事など。本書の影響で表現がストレートな部分が多くありますが、それもまた本書の提言だと感じましたので、そのままにしています。

まず、無記名の善意にあふれている現代社会においては、それを活用する人としない人の間に大きな差が生まれる、という点。無記名の善意についてはググっていただくとして、たとえて言うなら道路やインターネット、オープンソースソフトウェアが該当します。これらはすでに活用できる状態で目の前にあります。前世紀までとは比べものにならないぐらい多くあります。あとは活用するもしないもあなた次第ですよ、という話。

ここで問題となるのは、活用したくても時間が無くて、あるいはやる気が無くて活用できませんよ、という人がいる事。そう、活用するには活用できる状態を造り出す必要があるわけです。そして活用出来ない人の例が、モノとして扱われている人々です。幸い現代の日本社会においては、そもそも知識が無くて活用の糸口がつかめないという人はほとんどいません。活用できないのは主に、時間的な問題と、やる気の問題です。やる気が無い人はそれはそれで本人の選択でもあるからいいと思うのですが、時間の問題を抱えているのが、モノとして扱われている人々になります。本書の中では、モノとしての扱いから脱却するための提言がされています。例えば仕事時間を減らし、それによって収入が減るのなら支出を減らせ、など。そして節約した時間を活用してヒトとして扱われるよう自分を建て直す、というのが解決策です。

次に、カネこそが平等な基準であるという主張。これは堀江氏もよく言っていました。カネでモノを買える世の中こそが人々を幸せにしたという意味です。激しく同意。カネでモノが買えない時代に、人々に平等なチャンスが生まれにくいのは事実です。

そのカネとうまく付き合うためには、自分のバランスシートを作って質を見極めよというのが Dan KOGAI の提言。見極めた結果自分が持ってないスキルやモノは、誰かから買えばいい。それがカネにできることであり、カネを有効利用する方法でもあります。さて、自分に足りないモノは何でしょうか?それを明確にすることにより、カネだけでは無くコネ(人付き合い)の使い方が明確になります。

人間関係において最も重要なリソースは、時間。ここでも出ました。時間は全ての人類に、金持ちにも貧乏にも、マッチョにもウィンプにも共通で有限なものだからです。だからこそ、そのリソースの配分が重要になります。本書の中にはいくつか式が出てきますが、一番面白かったのがこれ。

友人1人当たりから得られる利益 = 相手の単価 – 付き合いに必要な時間

ストレート過ぎてひどい件w

さらに、お互いのコストを最小限にとどめ、利益を最大化する人付き合いという考え方も出てきます。上記の式のように、誤解を恐れずにストレートに話すことは、それに一役買っているのです。

付き合いに必要な時間 = コストに関してですが、その中でもとりわけ高くつくのが初回獲得のためのコスト。新しい知り合いをどんどん増やす際には、それに見合う戦略が無ければ効率が悪いという結論に到ってしまいます。それでもその高いコストを支払える人こそが多くのコネを保有するハブとなり、ネットワークの中心にいるのです。

先行投資をしてコネを先に獲得するか、資産を蓄えてからその資産を持ってコネに投資するか。重要な問題です。コネから資産が得られる人は、他の人より多くのコストを支払ってでもハブを目指すべきであり、短期的にはコネから得られる資産が少ない(コストパフォーマンスが悪い)人は、まず先に支払えるだけのコストを賄うための投資をすべきだということになります。

この部分、僕自身が常日頃意識していながら言葉に出来ていなかった部分です。この本で得られた一番の収穫かもしれません。ちなみに、こうやって見てみるとなんだかドライな印象を受けてしまいますが、コネから得られる価値はカネやモノだけだとは言っていません。精神的な安らぎや充実した時間のような、price less な価値も当然存在します。

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その他にこの本から得られた収穫としては、オン・ザ・エッジ時代の社内体制整備の話題があります。堀江氏の過去の本でも語られていた日報システムの本来の目的が見えました。いま自分たちが取り組んでいる社内体制整備の話題とリンクして、大いに参考になりました。

また、簡単に達成感を得られるものを常に用意しておくアイデアは即採用です。人間にとっての最大の報酬は達成感・満足感であり、それを満たす事によって新たな推進力を得るという考え方。やらなければならないことが山積みなのに手に付かない時、まずは達成感を刺激することから始めてみるというのは実に納得がいく話です。普段自分が実践している Google Docs を使ったマネジメントも、一種の達成感の見える化ですが、そこにさらなる応用として取り入れられないか、考えてみたいところです。

本書の後半は世界経済の今後を読み解くテーマとなります。少子高齢化で停滞した経済を救うための提言などは強引ではあるものの、もっと議論されてもいいと思いました。

最後に、この本の一番のメッセージとは何なのか。自分の中に残ったのは次の通りです。

単純なモノの価値だけでは価格競争に巻き込まれる、付加価値を付けて売れ!という言葉に代表される、現在の我々が接している社会から見えて来るもの。それは、ヒト(とヒトが生み出す無限の想像力)の価値が、それ単体では有限であるモノの価値を遙かに超え、カネの価値と nearly equal になったということです。そんな社会においては、いかにモノとしてでは無く、ヒトとしての価値を生み出す働き方ができるかが重要なのです。

さらっと読めたのでさらっと書くつもりが、長くなってしまった。それだけ密度の濃い本ということでしょう。

“[書評] 弾言” への 1 件のフィードバック

  1. アルファブロガー小飼弾は『弾言』する

    「残業だらけの上に給料が安い」とか「やりたいことが見つからない」、あるいは「恋人…

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