[ARMS] エグリゴリの卓越したビジョン駆動の企業経営戦略とその失敗の原因

ARMS
ARMS

注意: ネタバレ要素ありです。物語の自分的理解の範囲における本質的な部分は避けているつもり。

最近ふと思い出したことがあります。エグリゴリは非常によくできた企業である、ということ。

エグリゴリとは、ARMS に登場する架空の組織です。表向きには軍事企業ですが、その裏ではなにやら良からぬ陰謀を企てています。そんなエグリゴリのどこがすごいかというと、明確なビジョンがあり、あらゆる行動がその達成に向けて噛み合っているところです。

ちなみにここで挙げるエグリゴリとは、一人の少女の謀反をきっかけにして歯車が狂い、本来のビジョンとは違うビジョンへと変わってしまう以前のエグリゴリを中心にしています。幹部以外の人間にとっては、いまも昔も変わらぬビジョンだと思いますが、厳密には異なっているのでそこは抜きにして考えています。

エグリゴリの純粋で明確なビジョン

  • 「ヒトという種の人工的進化」

これがエグリゴリのビジョンです。

未知なる金属鉱物アザゼルを前にして、オスカー・ブレンチがアル・ボーエンにエグリゴリの目的を説明する場面からの引用。

旧原子力委員会の科学者は、”核の時代”を迎えた人類に対して二つのシナリオを提出している。
進化か・・・
滅亡か・・・
だが、このギャローズ・ベルで”アザゼル”を目撃した科学者は、米政府に第三のシナリオを提出したんだ・・・
“ヒト”という種の”人工的進化”という内容のシナリオをね。

この壮大かつ明確なビジョンを土台とし、数々の事業部門(非人道的人体実験)を展開しています。

  • サイボーグ
  • 人工天才児
  • 超能力者
  • 強化人間

そしてそれらのデータを元にシリコン生命との融合を果たし、人類が生命の実をも手にすることを目指します。エグリゴリ、そしてアザゼルという堕天使の名が示す通り、まさに神への反逆。

だがそれを忘れても組織は動く

おもしろいのはここからで、その崇高なビジョンなど末端の実験体にとってはどうでもいいという点です。それでもエグリゴリは力をつけていきます。ここにエグリゴリの強さの秘訣を垣間見ました。

それぞれの部門としては、自分達の部門を通してビジョンを達成することを考えていますが、末端の実験体達はそんな組織としてのビジョンなどおかまいなしに、個人的な事情で立ち上がります。
ですが、それがすべてうまく噛み合い、組織としても前へ進んでいく。そうなるように、考えて配置されているのです。

ARMS 適格者を研究するために造り出されたサイボーグ達、天才児達、超能力者達、強化人間達。彼ら彼女らは、その本来の役目を果たすと同時に自分達が ARMS というコア事業のための布石にすぎないと知り、自らの存在意義をかけて ARMS に戦いを挑みます。それによって ARMS は覚醒し、それがヒトという種の人工的進化への道を示すのです。要するに、次のような流れです。

  1. ARMS 適格者を生み出すためにあらゆる人体実験を行う
  2. その結果さまざまな進化過程の人間が生まれる
  3. 上記の実験データを元に ARMS 適格者を生み出す
  4. 2 で生まれた実験体が ARMS 適格者に「生きる意義」をかけて戦いを挑む
  5. 4 の結果ARMS 適格者が覚醒してコア事業 ARMS が結果を出し始める

良い、悪いという基準を抜きにしてみれば、あらゆるリソースに無駄がない、完璧なシナリオです。

組織の誰もが極めて個人的な事情によって、自分自身の利益のために組織を利用し、全力を尽くす。しかしそのすべての行動が、組織をより強固なものにし、ビジョン達成への礎となる。このようなビジョンを中心とした戦略の構築方法は、実に合理的です。

エグリゴリの問題点

そんなエグリゴリの崇高なビジョンも、一人の少女の謀反によって崩壊へと向かうわけですが、詳しくは本編を読んでください。崩壊に向かった原因。それがエグリゴリに足りなかったもの、問題点です。

個人的な欲求が組織のビジョンにリンクするように配置されている点はすばらしいし、その「欲求」が本能的レベルのものである点もすばらしいです。
※本能的レベルの欲求についてはのだめカンタービレに学ぶ目標達成の秘訣を参照。

ただ、それがプラスの方向の「欲求」では無かった。それが最大の問題です。加えて、利益を享受できる人間が限られていたことも問題です。情報封鎖が徹底している独裁的組織になら可能なことかもしれませんが、現代の情報化社会に合ったオープンな社風との共存ができませんし、なにより、ビジョンを達成しても参加者の誰ひとり幸せにしません。参加者を幸せにしない組織は、敵を増やすと同時に内部から崩壊します。
※変更後の真のビジョンについては本編参照。

エグリゴリは何を改善すべきだったのか

非人道的な実験をしている時点で多くの人を不幸にしているわけですが、せめてその成果をもってビジョンの達成を目指すのであれば、各部門にとってのプラスとなる目標設定をすべきでした。それも目標という生ぬるいレベルの物ではなく、本能的レベルの欲求に訴えかける目標です。

進化の行き詰まりを見せた存在をさらにその先へと導くという、その想定外で力強いビジョンは、見る人に衝撃を与えるものです。ですがそれを実行している組織が幸せでない限り、幸せな結果は生み出せません。
エグリゴリのスケールの違うビジョンの大きさと、その必要性、実現可能性に感銘を受けるとともに、自分には何が出来るのかをふと考えました。

戦争の正体と経営の目的

War
War

よく経営と戦争は似ていると聞きます。そのため戦略、戦術といった同じ用語を使うのだとか、名経営者は過去の戦史に多くを学ぶために歴史に残る戦争の背景や戦略の詳細を学んでいるとか。自分もそういう経営者を知っているし、直接言われたこともあります。

ですが、自分はこの感覚に長い間違和感がありました。戦争と経営の共通点をいまいち実感として持てなかったのです。ですが積極的にその感覚のズレを埋める行動はしませんでした。いつかこのズレが埋まるときが来るのを待つことにしていたのです。

ところが最近、ようやくその共通点が見えてきました。きっかけのひとつとなったのは、少し前にであったこのエントリー。

軍事的観点から見ても国際人道法の尊重は合理的なものである。市民の大量殺戮、投降した軍隊の殺戮、捕虜の拷問などの行為が軍事的勝利につながったことはいまだかつて一度もない。…国際人道法上の考えを尊重することは、資源の合理的な利用にもとづいた、近代的戦略の一環なのである。
国際人道法 ― 戦争にもルールがある, 小池 政行, P.90 – P.91

このように軍事的にも合理的でなければ、国々はルールなど無視します。なぜなら戦争の勝敗には国家の興亡、国民の命がかかっているからです。殺すか殺されるかというときに「そんなことは非道だからダメだ」といっても、聞き入れられるわけがありません。不戦条約が成立した後に第二次世界大戦が起こってしまったように、こと戦争となれば、邪魔なルールは無視されます。

だから必要なのは、戦争の遂行を過度に邪魔せず、むしろある意味では促進すらしつつ、同時に人命を可能な限り救うルールです。国際人道法を守ることが、国家戦略においても合理的だ、とみなされる状況をつくることです。

この部分から、戦争の正体を垣間見ることができます。

戦争の目的

意味もなく戦争をするほど人類は暇ではありませんでした。リスクをおかして何かを得ようとする時には、必ずそれ相応の目的があるものです。

戦争とひとくちに言ってもその形態や定義は様々で、何事も簡略化はできません。ですがあえて戦争の目的を単純化すれば、それは国益をもたらすことです。もっと言うと、自分たちが儲かること。自分が儲かること。究極の目的はそこです。そのために他国を侵略し、奪うことが必要だったら、それを実行した。それを歴史が教えてくれます。

戦争の変化

戦争は常に変化しています。人間が人間になる前から、争いは絶えなかったことでしょう。だからいま急激に何かが変わったということはありませんが、少なくとも堂々と他国武器を持って攻め込む戦争は減少し、その戦争にもルールが整えられつつあります。

時代が変わり、経済の仕組みが変わり、他国を侵略するよりも共存を目指す方が、自国が、自分が儲かるようになった。だから武器をとって攻め込む意外の方法で、いまも利益を求めた戦争は続いています。それが、国家の経済政策であったり、企業経営だと自分は思います。

殺し合いがダメだとか奪うことはいけないとか、そんなことは客観的な立場の人間に言えることであって、自国の、自分の利益が目の前に転がっている状況では、どんな残忍な行為も正当化されるのが人間の脳であり、人類が他の動物を抑えてここまで地球を支配するに至った原動力です。それを否定するよりも、より人道的で、参加者全員が利益を享受できる戦争のやり方にシフトすることが重要です。

インターネットは、その大いなる役割を担うものだと思います。

情報化社会における戦争勝利へのカギ

情報化社会の良い点として自分が感じることは、ありえない不公平を未然に防げる可能性が上昇したことだと思います。自分も祖父から戦争の体験を聞いたことは何度もありますが、そこに自分たちの利益を考えた形跡など全くありませんでした。要するに、一般的な戦争においては自分の利益を考えるごく一部の権力を持った人と、その権力によって動かされた多くの人という構図が存在したことになります。多くの人にとっては得られる利益など、小さいものです。

この不公平を未然に防ぐことができるのが、情報化社会だと考えます。誰かがみんなの目を盗んで利益を独り占めしようとした、ずるいのでみんなで制裁。誰かが自分の利益のためにみんなを巻き込んで利益を得ようとした、ずるいので協力しません。

このような社会では、いかに参加者全員の利益を最大化し、多くの人を巻き込めるかが非常に大きな意義を持ちます。

価値観の多様化する現代において利益の定義は様々です。要は、極度の個人的な動機で動くことがひいてはその個人が属する組織全体に利益をもたらす。この構図を機能させられる組織を作ることが、勝利へのカギとなります。

難しいことですが、挑戦する価値のある事だと思います。

Google にとって Facebook が驚異となる理由

facebook
facebook

この記事の解説を求められたので、引用しながら要点をまとめました。

前提知識

まずは、先日行われた Facebook カンファレンスの要点を挙げている部分の解説。

The three big ones: social plugins, Open Graph, and Open Graph API, make Facebook’s intentions very clear: they want to be the fabric of the web.

social plugins

Web サイトを Facebook と簡単に連携させるプラグイン群。プログパーツなどを通して、普通の Web サイトやブログが Facebook とデータを簡単にやり取りできるようになる。

Open Graph, Open Graph API

Facebook が誇る世界一のソーシャルグラフがオープンになり、外部で利用できるようになる。つまり、Facebook が保有するデータを元にして、外部の Web サイトを最適化することができる。たとえそれが初めて訪れた Web サイトであっても。

驚異となる理由

前提部分を見ただけで、これが Google のみならず多くの Web スタートアップにとって驚異となることが垣間見れたのではないでしょうか。

本題に行きます。Bret Taylor の Keynote からの引用。

The most interesting thing Taylor said was that Facebook’s stance is that social connections are going to be just as important going forward as hyperlinks have been for the web.

ハイパーリンクは重要、でも、今後はソーシャルグラフも同じぐらい、あるいはそれ以上に重要になっていると Facebook は考えている。

  • Google = ハイパーリンクの解析を世界一進めている企業
  • Facebook = ソーシャルグラフを世界一描いている企業

Facebook の見解が正しければ、Google にとって Facebook はこれまでに無いほどの驚異となります。Google が最も得意としたフィールド「ハイパーリンク中心の世界」ではなく、次の戦いのフィールド「ソーシャルグラフ中心の世界」で No.1 になった企業が誕生したからです。もちろんソーシャルグラフが次のフィールドになる、などと決まっているわけではありません。それは歴史が証明すること。ただし、Facebook の増え続けるユーザー数がそれを証明しつつあるのは事実。そして、Google をはじめとする多くの企業、Web スタートアップがソーシャルグラフに注力していることも事実。

最後に

Companies will have to choose whether to fight against this, and attempt to launch their own graph, or get in line. “When we connect our graphs together, the web is gonna get a whole lot better,” Zuckerberg promised.

Facebook を中心とした、ソーシャルグラフをめぐる激しい戦いが顕著になりました。戦いを挑むか、降伏して Facebook の流れに加勢するか、大きな選択の年になりそうです。

萌え要素に学ぶブランディング戦略

Haruhi cake for my 25th birthday
Haruhi cake for my 25th birthday

Kaizen に次ぐ、日本が生み出した偉大な日本語である Moe について、ブランディング戦略への取り入れという視点で考えてみました。

きっかけは、映画「涼宮ハルヒの消失」。映画の感想は別の機会に譲るとして、この萌えの最上級作品を目の当たりにした自分は、何か自分の生き方への応用を模索せずにはいられなかったのです。

前置きは以上で、まずは萌えの歴史的背景から振り返ります。萌え要素は、それが萌えと呼ばれるようになる以前から、多くの作品に取り入れられてきました。さかのぼるときりがないので、自分がさかのぼることのできる限界まででとどめます。

萌え紀元前: 萌えでは無くセクシーであった時代 ’80

かつて男性をメインターゲットとした作品では常に女性が登場しました。例えそれが男のロマンを描いた作品であったとしても、女性の登場は必須でした。理由は単純明快。

  • いくらすばらしい作品でも見てもらえなければ良さが伝わらない
  • 見てもらうためには観客に最初の一歩を踏み出させる強力な動機付けが必要
  • 生物としての本能に訴えかけるために女性を登場させよう!

そして、男のロマンの中に女性という構図で観客を集めることに成功しました。

この時代の代表作としては以下のものが上げられます。括弧内はシンボルとなった女性。

  • 北斗の拳(マミア)
  • ドラゴンボール(ブルマ)

しかし、この時はまだ萌えではなくセクシーでした。他の作品との差別化を図りながらも、ライバルより刺激的なアピールをし、より多くの観客を取り込むという競争が過熱していきます。そのためのアプローチは、ただただ刺激を強めるというものでした。ここで言う刺激とは、セクシーさ。つまり、社会の倫理基準の限界を攻める形で、よりセクシーさを強調する戦いが繰り広げられたとも言えます。

萌え元年: 萌え要素の誕生とセオリーの確立 ’90 前半

過当な競争が繰り広げられた結果、セクシーはただのエロへと成り下がります。そこで革命が起こりました。それは、ただのエロではなく恋愛感情を持たせることによって観客を取り込むというアプローチの誕生でした。当時は言葉こそ広がってはいなかったものの、これがいわゆる萌え要素の誕生だと自分は考えています。

恋愛感情を作品として取り込むためには、より多くの観客の趣味嗜好にアピールする必要性が出てきます。そこで採られた戦略は、あらゆる萌え要素を宝石箱のようにちりばめるというアプローチでした。その結果作品の目的は恋愛が主体となります。これと家庭用ゲーム機の普及が重なり、これまでには無かった恋愛を最終目的としたジャンル、恋愛シミュレーションが誕生しました。

  • ときめきメモリアル
  • サクラ対戦
  • その他多数の作品

この恋愛シミュレーション最盛期に、あらゆる萌え要素が発見されます。誰もが心に抱いていた順当なものから、各作品の熾烈な新要素発掘の結果から生み出された予想を覆す要素まで、その功績は多岐に渡ります。代表的なところだけでも下記のようになります。

  • 清純派
  • 幼なじみ
  • 姉系
  • 妹系
  • ドジっ子
  • メガネっ子
  • 金髪
  • ボクっ子
  • 無口
  • ツンデレ

恋愛シミュレーションにおいては作品のメッセージ性以上に、恋愛が強調されるため、作品として深さやメッセージ性を持ち合わせることが非常に困難になります。ただ、その状況を打開したのが、サクラ大戦や PC ゲームでした。ストーリーと萌え要素の複合技の誕生は、こうして起こりました。

またこの時、後の歴史を決定づけていく萌え要素の組み合わせセオリーが次々と確立されます。

ちなみに、実際に「萌え」という言葉が誕生したはこの頃だと言われています。萌えの語源説となっている恐竜惑星も見ていました。

萌え発展期: 萌え要素が起こしたセカンドインパクト ’90 後半

萌えが誕生したその直後、いよいよ革命が起こります。その革命とは、圧倒的なストーリーとメッセージ性を主体とした上で、さらに萌え要素を盛り込み、一世を風靡する作品が登場したのです。その作品とはご存知、新世紀エヴァンゲリオン

作品のもつ本来の魅力に、観客を引きつける強力な動機付けとなる萌え要素。これらが引き起こす化学変化は、まさに地軸をゆがめるほどのものでした。

エヴァンゲリオンは、ただ萌え要素をうまく使っただけではありません。恋愛シミュレーションとの明確な違いである、萌えの2大要素化を確立しました。

これは、萌え要素をただたくさん取り入れるのではなく、ピンポイントで強調すべき2つの要素に絞り込んで競わせることにより、さらなる熱狂を生み出す戦略の確立です。これを僕は萌え要素のデュアルコア化と呼んでいます。

萌え要素のデュアルコア化とは、具体的には2つの大きな「差別化された」萌え要素を全面に押し出し、その2つの要素の相乗効果により、観客をより深いレベルに誘い込むことを意味します。
例としては、「レイ派」と「アスカ派」に別れて議論しているうちに、ストーリーのより深いレベルに入り込み、議論の目的が作品の理解へと変わっていくことなどが挙げられます。
これを実現するためには、作品本来の主体であるストーリー性やメッセージ性との相乗効果を狙える萌え要素を意図的に取り入れる必要があります。エヴァンゲリオンとは正に、それを実現した作品でした。

萌え最盛期: キャズムを超えた萌え ’00

デュアルコア化した萌え要素の勢いは止まりません。ここから、次々とデュアルコア萌えが登場します。正当作品であったガンダムシリーズでさえ、デュアルコア化していきます。

  • 交響詩篇エウレカセブン(エウレカとアネモネ)
  • ガンダムSEED(ラクス・クラインとカガリ・ユラ・アスハ)

そしていよいよ、萌え文化が生み出した最高傑作が登場します。

その作品こそ、涼宮ハルヒの憂鬱

ハルヒのすごいところは、発展期以降守られてきたストーリー性やメッセージ性を維持したまま、それを全く全面には出さず、あえて萌え要素のみを全面に押し出すことにより、観客の期待を大きく裏切ったところにあります。さらにその強調された萌え要素が芸術的なレベルで設計されており、萌えのデュアルコア化に加えて、下記のような手法が採用されています。

  1. 萌えとセクシーの両立
  2. 距離感の演出
  3. 新興市場の提供

1. 萌えとセクシーの両立

涼宮ハルヒ、長門ユキというデュアルコア化された萌え要素と、朝比奈ミクルというセクシー要素を共存させることにより、あらゆるレイヤーで観客を取り込んでいます。これが SOS 団員の女性が3名である理由であり、大ヒットの理由だと考えられます。誰が欠けても、どの役割が不足していても、このヒットは無かったと言えます。

2. 距離感の演出

これは、単なる恋愛シミュレーションにしないための措置です。多くの萌え要素を取り入れた結果起こりえるのが、萌え要素のハイパーインフレ。恋愛シミュレーションを経て、行きつく先はエロという名の市場崩壊です。そうなっては人々に受け入れられるどころか、作品本来のファンすら離れていく結末が待っています。
ハルヒではそれを避けるために、あえて主要萌え要素以外とは距離を置く設計が採用されています。名前を与えなかったり、恋愛感情の発生を抑制する関係に配置したり、悦妙なバランスを保っています。キャラの立ち位置ひとつとっても、非常にうまく設計されていることがわかります。

3. 新興市場の提供

市場全体の盛り上がりに欠かせないのが、その下支えとなる組織の存在です。ハルヒの場合は、主要メンバー以外のキャラクターにも適切に萌え要素を配置し、一定のファンを獲得しに行っています。先ほど距離感が重要だと述べましたが、デュアルコア萌えのみが孤立してはいけないのです。マイナーなキャラクターでも、それを応援する観客が必ず現れます。その観客の存在が、市場全体を盛り上げるのに大いに貢献するのです。

マーケティング戦略において重要な萌え要素とは

作品を作りあげ、それをより多くの観客へ届けたい。これは、アニメ or マンガ製作者、企業経営者、共通の願望です。そして、萌え要素を上手く取り入れて結果を残したアニメ or マンガ製作者に習い、企業経営者には何ができるでしょうか。

分かりやすく挙げられるのは、ブランディングの際意識すべきポイントだと考えます。ハルヒが成功した最も大きな要因と僕が考える、デュアルコア萌え+セクシーは、アテンションエコノミー全盛の現代社会において、非常に有効なブランディングの手法だと考えます。

マーケティング戦略における萌え要素

萌えとはすなわち、最大のアピールポイントです。ここで言う最大のアピールポイントとは、目的を達成するために必要となる最も必要な要素のことです。それを2つ見極めることが、まず必要です。

マーケティング戦略におけるセクシー要素

セクシー要素とは即ち、本能に訴えかける明確なメリットです。本能は単純な判断を行います。可能な限り分かりやすく、ダイレクトに響く要素を見つける必要があります。

ハルヒメソッド

これら3つの要素を組み合わせ、訴求していく手法をハルヒメソッドと呼び、今後自分は使っていこうと考えています。実はいくつか実験的に取り入れているのですが、2 + 1 に絞り込むのはなかなか難しいです。

篠原裕幸(Hiro SHINOHARA)の場合はどうか

実践してみます。自分個人のブランディングを考えたとき、この 2 + 1 はどう活かせるでしょうか。直感的に浮かんだのはこれ。

  • Podcaster, Founder of messaliberty, Anime Otaku.

ですが、客観的に見ればまだ各要素が弱いのが現実。それを強化していくと共に、各要素の弱さを補完していくブランディング戦略が必要です。今後の自分の活動を通じて、この考えを実験してみます。

Google 名誉会長村上憲郎氏講演

Mr. Norio MURAKAMI
Mr. Norio MURAKAMI by GDD

友人の経営者から、Google 名誉会長の村上憲郎氏の講演があるから申し込んどくよ?と連絡が来たので、そのまま申し込みをお願いし、参加してきました。少し前のことです。結論から言うと、今回村上さんにお会いできて、非常に良かった。それはなぜかは後ほど。まずは講演とパネルディスカッションのメモ。

Google のビジネスモデル

  • Google のビジネスモデルは100%広告モデルであるべき
  • 広告はネアンデルタール人時代から存在する不滅のビジネスモデルである
  • 現売上2兆円のうち97%が広告売上
  • 広告だけにしたい
  • Google はコンテンツを持たない
  • ブリッジの役割のみを果たす

    • インターネットのすべてを無料化させようとしてるわけではない
  • 1ページで明確に語れるビジネスモデル・ビジョンに従うのみ

最大の強みであるサーバーインフラ

  • 現状を見越して意図的にサーバーインフラを自作していたわけでは無い
  • コストを下げるための努力が結果的に競合優位性につながった
  • データセンターは東京ドームサイズが世界に2桁以上存在する
  • PUE 1.2 を切っている

Google 流経営

  • 経験豊富な経営陣の役割は若者が過去の失敗を繰り返さないようにすること
  • 20%ルールは時間じゃなくて労力の問題
  • 報酬は時間拘束の対価では無くアウトプットされた成果物への対価
  • それを機能させるのが360度評価

    • 上司・同僚・部下などが評価する
  • 20%の対象は年単位でチームにコミットする
  • 各クオーターごとにレビューする
  • Google の主力サービスはそのほとんどが20%ルールから生まれている
  • 活発な中から生まれてくるものに意義がある
  • これぞ究極の民主主義
  • 技術者は金儲けを考えなくて良い
  • IT 業界はサービス業である
  • サービス精神が重要

Google 流採用

  • 面接は同僚が行う

    • エアポートテスト
  • 楽しくなければ仕事じゃない
  • 寮の雰囲気で仕事をする
  • 天才しか採用しない
  • いわゆる Hacker タイプしか採用しない
  • 論文を書くタイプは不要

自分がやるべき事

印象に残ったのは、「なぜイノベーションはいつもシリコンバレーから生まれるのか」、という質問に対する村上さんの回答。なんと、「わからない」でした。この回答はかなり刺激的でした。日本だけじゃなく、世界中の他のどんな地域からもイノベーションは生まれない。なぜかシリコンバレーなのだ、という回答。イノベーションを起こすにはそこへ行くしかないということがハッキリしました。

話を聞いているとき思ったのですが、エンジニア目線で Google 関係者の話を聞くことはあっても、経営者目線で話を聞けることはこれまでにありませんでした。それも、トップの話を直接、です。

講演後、パーティーがありました。僕と友人の経営者は二人で村上さんの所へ行き、今日の話しが刺激的だったこと、自分たちがこれからやりたいことをまくし立てるように話しました。すると村上さんがこんな風に言ってくれました。

「前から2番目に座っていた二人だね。僕は君たちに話していたんだよ。君たちが大きく頷きながら聞いているのを見ていた。がんばってね。」

あまりに刺激的な話に、ニヤニヤこそこそしながら聞いていたのですが、この言葉は嬉しかった。例えリップサービスだったとしても、こんな風に若者を奮い立たせる村上さんがカッコイイ。

気づいたときには、「シリコンバレーに行きます。そこで会いましょう。」と言っていました。

大切なのはここから。改めて現状を認識し、確実に前進できるよう、できることを最速でやっていこうと改めて決意しました。

[書評]「ツイッター」でビジネスが変わる!

Twitter Power
Twitter Power

知った気になっているだけで意外と知らないこともあるのかなと思い、この度改めて Twitter 本を数冊購入してみました。まず読んだのがこの本。

Twitter の背景や機能の紹介、ビジネスへの応用についてまとめられています。結論から言うと目当たらし情報があるわけではありません。2009年11月発売で、さらに訳された時点で情報が陳腐化していたのだと思います。Twitter に関しては最新の動向を本で知るのは無理があるので、そういう目的で読むのはおすすめしません。

ビジネスへの応用という観点では、発言時に注意すべき点や、より効果的に活用するための Tips が参考になります。さすが自ら利用している人の本。納得した部分を強引にまとめるとこんな感じ。

  • 背景画像大事
    • ブランディングのため
    • 追加情報の掲載
  • 1行プロフィール大事
    • 専門家としての印象づけ + 人間味のある趣味
  • 単なる行動の報告ではなくそのときの自分の感情や意見を発言する

結局本書の結論は、読む価値のある Tweet を継続的にしろということです。

そのほかリサーチした情報が載っています。状況がかわっている前提だと捉えるべきですが、本書内で述べられている Twitter の利用者動向は以下の通り。アメリカ国内の情報であることにも注意。

  • 35歳代〜44歳代の比較的裕福な層が多い
  • 男性利用者の方が多い
  • シリコンバレーでの利用率がえげつない

訳者追記にあっに日本国内の Twitter 利用者動向は以下の通り。

  • 2009年8月の利用者数193万人
    • Webインターフェース経由
    • iPhone など入れるともっと増える

以上。

Google も Yahoo! も YouTube も英語表記のままが多く、カタカナ表記の時も本来の発音に近い。なのに Twitter だけ「ツイッター」と訳すのが基本になっているこの流れは個人的にはいやだ。

ようやく1日1冊本を読む習慣が身についてきた。後は読んだのを短時間でここにまとめるのが課題。

個人間送金の手段が世界の経済の常識を変える

テクノロジー/ビジネス、そのどちらにも新たなトレンドを生み出しそうなのがこの製品。現状我々は財布の中の小銭を除いて、少額のお金を個人間で支払う手段を持っていません。

日本だとさらにおサイフ携帯と連動ができるといいな。

上の動画で Kevin がデモするまでこの製品のことは気にかけていなかったのですが、Jack Dorsey が立ち上げたと知ってなおさら先行きが楽しみです。

コンビニ大手の資本関係

コンビニ関連図

この図はわかりやすい。

Via: 総合/ファミマ会心、再編の口火 am/pm120億円で買収 – FujiSankei Business i./Bloomberg GLOBAL FINANCE

やはり戦いは3社で争うのが美しい。

ゲームでも。

  • Wii
  • Xbox
  • PS3

OS でも。

  • Windows
  • Mac
  • Ubuntu

ミュージックプレイヤーでも。

  • iPod
  • Walkman
  • Zune

検索エンジンでも。(これはもう違うけど。)

  • Google
  • Bing
  • Yahoo!

あれ?Microsoft 忙しすぎ。

AIG ボーナス問題

今日こんなエントリーを見つけたので紹介。

金融日記:AIG社員の最後の手紙(翻訳、藤沢数希)

AIGボーナス問題。個人的には、あの非難のされようには違和感を感じていました。非難自体にではなく、メディアの主張が一方的である事に対してです。

ちゃんと説明すれば理解される事なのではないかと思っていたのですが、その説明が十分にできなかったのか聞いてもらえなかったのか、あるいは騒ぎ立てる事でスケープゴートにされたのか、とにかく収拾が付かなくなっていったのが現実です。問題なのはボーナスの支払いではなく、もっと業界全体の構造的な部分にあると思うのですが、どうなんでしょう。自分もあまり詳しくないので断言できませんが。メジャーリーグみたいに業界全体で報酬が高騰しちゃってるのは確かだと思います。

コミュニティー VS マーケット

必読の記事を見つけました。2ch のひろゆき氏のインタビュー記事です。コミュニティー や CGM、そしてそれらのマーケットについての、彼の視点が語られています。

4Gamer.net — [OGC2008#03]「2ちゃんねる」と「ニコニコ動画」のひろゆき氏が語る,ゲーム・コミュニティ・文化(シヴィライゼーション4【完全日本語版】)

ちょうどいま、自分たちのビジネスの次のステップについて、重要な判断をしているところです。そのタイミングで上記記事を読み、自分の考えとの相違点、または共通点を発見し、多くの影響を受けています。

Blog に考えをまとめる時間がとれないんですが、気になった言葉を引用しておきます。多すぎてごめんなさい。

僕は赤の他人とチャットしても,面白いとは思わないですからね。

まず「友達と遊ぶ」というのがあって,それが麻雀だったりモンハンだったりするという流れです。

彼らにやりたいと思わせるか,彼らがやりたいことをやるようにするかの二つだけが選択肢です。

残った情報として価値が高いのはどっちかっていうと,たぶん属人情報が少ないほうじゃないかと,僕は思うんですけど。説得したければそうせざるを得ない。

こういうコミュニティって,だいたい2,3年でつぶれるんですよね。つぶれる理由ってやっぱり,常連が幅を利かせるからで。そうすると新しいところに行くっていうのが,いままでの解決策だったんですけど,そこをなんかシステム的にいじって解決できる方法があるかな,というのを,いろいろと試しているんですけど。

携帯電話って,サービスを提供します,サービスを使う人ですっていうのが,完全に分かれていて,使う人が面白いものを創る文化っていうのが,そんなにないんですよね。

ケータイ小説とかだと一人で作れたし,YouTubeもだいたい一人で作品を作ってる。それに対してニコニコ動画の場合,人が作ったものを勝手に変えるのもアリだよね,という文化圏なんですよ。ケータイ小説もYouTubeも,それはあんまりないんですけど。

ニコ動とかも,結局面白いものを作るためにみんな集まっているんだよね,っていうところの価値観だけは共有できてるけど,その方向性,何が面白いかっていうのはそもそも人によって違うから,コントロールしようがない。だけど,面白さを目指している限りはそれでいいよねっていう,最低限の認識だけはカッチリしているっていう。

文化って,最初は面白いで始まって,それがいつの間にかビッグビジネスになっちゃったりするわけじゃないですか。だからたぶん経済はあとからついてくる。いまは文化を創る時期で,そのうち経済が回ってくれば,システム側の人も「回ってるんだからしょうがないよね」と,追従せざるを得ない状況になると思うんですけど。

「2ちゃんねる」のユーザー,月に使う人がだいたい1000万人くらいで,ミクシィがいま800万人とかそれくらいかな? で,インターネット上で何か時間をつぶそうと思ってつないでいる人が4000万人くらいで,その20%くらいが限界だと思うんですよね。会社で使っていますとか,ネットは単なるツールでテレビが好きとか,人をナンパしているほうが好きとかって人は,いっぱいいるので。そこらへんで,たぶん2000万人くらいがMAXなんじゃないかって思うんですよね。

どちらかというと人材募集ですね。結局サービス作るのは人なので,面白い人が「あ,この会社面白そうだ」と思って,手伝ってくれないと回らないですよね。なのでちゃんと「面白いことやってます」って言わないと。

ユーザーが楽しんでお金を払いたいと思う時期って,たぶん読めないんですよ。どんな優秀な人でも。読めないっていうのと,お金を出した人に収益を返さなきゃいけないっていうジレンマの解決は,やっぱり無理なんですよね。早く回収したいというのと,ここはゆっくり育てなきゃいけません,で,どっちが正しいかというと,株主が正しいのが株式会社のシステムなので,普通はうまく回らないと思うんですよ。

本来は,お金を払ってもいいと思えるぐらいの価値をそこで作るべきだと思うんですよ。なので,広告だけで頑張りますというのは,僕はちょっとどうかなとは思うんですけど。

まあ,大航海時代みたいな(笑)。何隻沈んでも,めぐり合わせの問題じゃ,しょうがないよね,みたいな。